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愛知万博訪問記

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 #7 グローバルハウス 05/07/03

 場1時間前に入場ゲートに到着したにもかかわらず、もうすでにゲート前の広場から人があふれ出んばかりの混雑ぶり、さすが日曜日です。結局、今日も企業館はパス、まだ見ていないパビリオンの予約券を確保し、そちらの方をゆったりと見学することにしました(1人で来ているときには、20分以上の列には並ばないことにしています、せっかちなもんで)。


 1、EXPOホール〜吹奏楽

 まず、一度入ってみたかったEXPOホール(写真左上)に直行。ここでは毎日、イベントやコンサートが行われています。今日の出演者は地元名古屋の吹奏楽団「名古屋ディレクターズバンド」。名前は聞いたことがあるのですが、演奏を聴くのは初めてでした。440名収容の中規模ホールはもう満席、入り口付近にはキャンセル待ちの列も見られました。

 「朝から吹奏楽んた、ちょっと重いかしゃん」と思っていたのですが、指揮者兼司会者の方、ことばからしてどうも関西人のよう、その軽やかなしゃべくりで、1曲目終了早々から観客の心をつかみ、私たちを吹奏楽の世界へと引きこんでいきます。誰もが知っているクラシックの名曲のほか、子供向けの曲やポピュラー音楽も取り揃え、吹奏楽をよく知らない観客でも楽しめる内容となっていました。このような「お仕事」にはかなり慣れてみえるようです(参考になります)。

 同じ管楽器を演奏するものとして、ついつい技術面に気が取られてしまうのは悪い癖。まず、生音(PAなし)にもかかわらず強弱にメリハリがあるのに感動、さすがクラシック畑のみなさん。最後は「お約束」のアンコール、曲は私の世代にとってはなつかしい、ジグソーの「スカイハイ」。ただ、ビッグバンドのハイノートを聞きなれた私には、テュッティがちょっと迫力不足に感じました。まあ、それぞれ、得意不得意があるのですね。それにしても、吹奏楽の皆さん、クラシックからポピュラーまでこなさなければならないので、大変ですね。そんなことを思いながら、ホールを後にしました。


 2、各コモンにおけるパフォーマンス

 EXPOドーム・ホールなどの大きなステージだけでなく、各コモンの特設ステージや各パビリオンにおいても、多くのパフォーマンスがみられますが、これは今回の万博の大きな特徴となっています。どこを歩いていても音が聞こえてきて、常に人だかりができています。普段はめったにお目にかかれない民族音楽や民族舞踊などなど、私もついつい引き寄せられてしまいます。

 今日はスリランカ館の前で、パーカッション奏者4人による演奏を目にしました(写真右上)。パーカッションは一番原始的な楽器であるということもあるのでしょう、アフリカ共同館や瀬戸会場市民市民パビリオンをはじめ、多くのステージでお目にかかります。今日聞いたスリランカ音楽は、16ビートのまるでサンバのようなリズム。左から2人目の奏者は、言うなれば「スネア」ですね。スティックの形がL字型だったのですが、アフリカ館でも同型のスティックを見ました。楽器の形状を比較するのも、文化人類学的に面白いかもしれませんね。

 コモン6のステージでは、マレーシアの民族舞踊(写真下)。マレーシア館併設のステージで、一度拝見しています。私はダンス・舞踊には疎いのですが、民族舞踊はどこかエキゾチックな感じがします。音が聞こえてきたので、ステージに近寄っていったのですが、ほどなく終了、残念でした。ステージ終了後は、ダンサーたちによる握手会、サービス満点ですね。もちろん、私も握手して来ましたよ。

 
EXPOホール
スリランカ館の演奏
マレーシア館のダンス マレーシア館のダンサー



 3、ああ、幻の2回目出演

 そもそも、私がこの愛知万博にハマってしまったきっかけは、私が所属するバンドの万博会場での演奏。万博の雰囲気もあまりよくわからない状況でしたが、本当にいい思い出になりました。できれば、現在のように万博の雰囲気がよく分かってきた中、また演奏をしたいものだと思っていました。

 そんな中、万博で演奏しないかという依頼が突如バンドに舞い込み、受けることになりました。場所は円形広場(モリ ゾー・キッコロ広場)の特設ステージ、日時は7月31日に決定! 他のバンドも紹介してくださいということでしたので、連盟の各バンドにも依頼。「モリゾー・キッコロ広場がある『遊びと参加ゾーン』への集客を促進することにより、隣接する『地球市民村』『わんぱく宝島』 の来場者増を図り、ゾーン全体の活性化を行う」とのことでした。また万博会場で演奏ができると私は大喜び、家族や会社でも吹聴しまわっていました。

 ところが、2日後に先方の代理店から断りの知らせ。今回の企画が、万博協会より他の代理店にも発注されていて、そちらの企画が通り、こちらの企画は没になったとのことです。「なんじゃ、そりゃ。ほんなこと、あるんかいな」などと思いましたが、残念がっているのはごく一部のメンバーだけ。多くのメンバーは「万博にはそもそも興味がない」「万博は1回で十分」「煩雑な手続きはもうしたくない」など、このキャンセルにどこか安堵した様子。バンド内でも、万博に対する温度差が大きいようです。でも、個人的には、見学者としてだけでなく、演奏者もしてもう一度万博に参加したかったですね、残念。



 4、グローバルハウス

 「一度、話題のグローバルハウス(GH)かって、見とかなかんな」ということで、私も足を運んできました。ここは企業館と並んで人気スポットのうちのひとつ。特に、冷凍マンモスが今回の万博の目玉になっていることは、ご存知のことと思います。GH前では、いつも整理券を受け取る人の長蛇の列ができているのですが、今日は運良く待ち時間なしで整理券を受け取ることができました。


 知万博のシンボルのひとつ、グローバルハウス。といっても、愛知県の多くの人にとっては「愛知青少年公園の室内プール・スケートリンクの建物だった」というイメージが強いのではないでしょうか。このプールが完成して1度しか訪れていない私でさえそうなのですから、竣工されて10年間、この施設を何度も使用してきた方はなおさらでしょう。GHの周辺を観察すると、ご覧の通り、子供用の小さな屋外プール(写真左)や屋外に突き出たスライダー(写真右)が見えます。万博終了後には、またもとの姿に復元されるそうです。それにしても、こんなことを観察しながら万博会場を散策するなんて、城郭を見学するときの癖がついつい出てしまいますね。

 室内プールの建造物が、GHとしてどのように使用されているんだろうかなどと観察しながら、パビリオンの中へ。見学コースは、こちらの意思とは関係なく、映像中心のブルーホールと展示中心のオレンジホールのどちらかへ振り分けらるのですが、私は後者の方。NHKのスーパー・ハイビジョンを見たあと、展示コーナーへと進みました。


グローバルハウス・西側 グローバルハウス・東側


 「世界各地から収集した『たからもの』。人類と環境の関わりを探る研究の最前線を展示」というのがコンセプトになっています。「たからもの」は時代順に展示されているのですが、人類学・考古学などの遺物から、美術品、果ては「月の石」まで何でもありのごった煮状態。それがまた、ごった煮の趣味の私にはまさにおあつらえ向き、私のために展示してあるのかと思うほどです。それぞれの「たからもの」を興味深く観察させてもらいましたが、特に印象に残ったものがいくつかありました。

 一つは、骨のレプリカ。2002年に中部アフリカのチャドで発見された約700万年前の猿人「トゥーマイ」の頭骨、1974年にエチオピアで発見された約320万年前の類人猿「ルーシー」の全身の骨格など。「ルーシー」は、形態人類学の本には必ず紹介されているほど有名で、最初に2本足で歩いたのではないかと考えられてきました。ところが、「トゥーマイ」の発見以降は、2本足出で歩いた時期がもっと早かったのではないかと指摘されるようになりました。これらの骨のレプリカを見たり手にとったりしてみると、私たちの遠い祖先の大きさが実感できますね。ちなみに「ルーシー」は身長1mと推定されています。

 これはマンモスの全身複元模型についても同様。冷凍マンモスやマンモスの骨格標本を見るより、マンモスの模型の方がその具体的な大きさを実感できます。環境変化もありますが、このような巨大な動物を、ほんの1万年前の私たちの祖先が絶滅に追いやったのかと、感慨深く思いました。

 さて、一番印象に残ったのが「井真成墓誌」。これまでその名を知られることのなかった遣唐使留学生の井真成の墓誌ですが、国号「日本」の記述がみられる最古の資料として学術的に価値の高い資料とされています。昨年、中国で発見され、マスコミでも大変注目されたことは記憶に新しいかと思います。

 このような貴重な資料が突然目の前に飛び込んできたわけですから、他の一部の資料と同様、レプリカかと思いました。近くのアテンダントの方にお尋ねしたところと本物、それも展示は今日まで。万博後は、東京国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館において順次展示公開されるとのことです。私も時々、名古屋市立博物館へこのような特別展を見に行くのですが、幾重にも人垣ができて、とてもじゃないですが、目玉の展示品をゆっくり見るどころではありません。それを今日は間近で、しかも独り占めしてみれるなんて。なんという幸運でしょうか。


 このような遺物に出会うと、遠く離れた地で何百年、何千年も前の人が作った物と、2005年に生きる自分がこのようにめぐり合えることのできた不思議な縁を、いつも思います。そして、これらがどのような経緯で作成され、どのような運命でこの地にやってきたのか、ついつい想像を巡らしてしまいます。

 猿人の骨から月の石まで、人類がどのようにして今日の状況を生み出してきたかを、ひとつひとつの「たからもの」が雄弁に語ってくれます。これらの「たからもの」と巡り合うことはもうないかもしれませんが、今日、グローバルハウスで見たことは、多分、わすれないかと思います。


 それにしても、大阪万博であれだけ注目を集めた「月の石」の影の薄いこと(おまけに小さいし)。また、冷凍マンモス、写真でみたそのままという感じ、こちらは印象が薄かかったですねぇ。ただ、DNA鑑定の結果、マンモスはアフリカ象に近いという通説に反し、アジア象に近かったという報告は興味深かったですね。


 
5、森の自然学校(北の森)

 グローバルハウスの南側が、森の自然学校「北の森」。森の中に散策路が設けられ、万博会場の喧騒から離れてゆったりと自然を満喫できるエリアとなっています。散策路だけでなく、所々に装飾がしてあったり、仕掛けがしてあったりと、パビリオン巡りとは一味違う万博を味合うことができます。

 雨の中ということもありますが、すれ違う人も少ないですね。

北の森・入り口 休憩所より大地の塔を望む

 散策路の出口は、西エントランスの南側。ここは未体験のビューポインド、ここからの万博会場の展望もなかなかのものです。




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