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万 博 考

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 #11 漢字の国 10/06/08

 初めて上海に行くに辺り、楽しみにしていることが一つあります。それは、漢字の看板で溢れる上海の街並みを歩いてみること。

 (1)中国の漢字

 小学校低学年の頃、祖父が出張で台湾へ行き、私へのお土産として買ってきてくれたのが、現地の漫画本。『児童楽園』(The Children's Paradaise)の378-380号。これが、初めて中国語の漢字を見る機会となりました。中華民国57年との表示がありますので、1968年(昭和43)。ということは、大阪万博の2年前、私が小学校2年生のときということになりますね。

『児童楽園』378-380号 991号

 難解な漢字を読むことも、文章を理解することもできるはずありませんが、当時の私にはとても珍しいもので、絵を見ながら物語の流れを推理したり、知っている漢字を探したりと、飽きもせずに何度も見ていた記憶があります。

 この漫画本、40年近く過ぎた今も大切に保存してあるというのは、子供の頃から紙資料収集マニアだったということかもしれませんが、それだけ想い出のある本だったということでしょう。ちなみに後年、1991年のことですが、香港の街を散策していたら、屋台の本屋でこの漫画誌を発見。991号(写真右上)。「まだあったの?」と驚きつつ(失礼)、懐かしさのあまり購入してしまいました。内容的にはあまり変わっていなくて、なんだかうれしく想ったものです。


 (2)台湾へ

 そんな祖父の影響もあってか、台湾にちょっと関心を持つように。大阪万博では、祖父に連れられて「中華民国館」へ。台湾の知人にパンフレットとか写真を送るんだと、祖父が言っていたのをを覚えています。

 いつか台湾へ行きたいと思いつつ、初めて訪問したのが1988年。漢字(繁体字)の看板が所狭しと並ぶ様子は圧巻。あまり美しい光景とは言えませんが、この混沌とした街並みが私の波長に合っているようで、ますます台湾が好きになったのでした。機会があれば、また行きたいものです。



 (3)香港へ

 台湾へ行く4年前、トランジットでたまたま香港に滞在したことがありました。この混沌とした雰囲気に惹かれ、たちまち香港の虜に。それ以来、いつか再訪したいと願い、訪問したのが1991年。ひとりで香港の街を散策、こちらも漢字(繁体字)の看板ウオッチングが一番の楽しみでした。

 当時、まだイギリスの植民地であった香港。台湾とはまた違った、イギリスの雰囲気が残る街並みに英語表記が混じった横長の看板が多くみられました。

ネイザンロード 旺角
上水 上水


 (4)繁体字と簡体字

 台湾と香港。大陸とは違った歴史を歩んできた両地域は、伝統的な繁体字を現在に至るまで使用しています。日本語で言うところの、旧漢字。つまりは正統的な字体、ということになります。

 日本は戦後、現在の当用漢字に改められることになり、一般的に旧漢字を使用することはなくなりました。私が台湾と香港の漢字を違和感なく受け入れ、親近感を持ったのは、そのような歴史的背景があったからなのかも知れません。

 台湾へ行った後、ちょっと中国語を習ってみようかと中国語教室へ。このとき初めて出会ったのが、簡体字。視覚的には、随分と違ったものです。心理的にも慣れるのにちょっと時間が掛かりましたが・・・。

 あれから20年近く、大陸も大きく変貌してきました。その象徴的な都市、上海。どんな街なのかという興味もありますが、裏通りの街並みもちょっと覗いて見たいものです。路地に掛かった、簡体字の看板を観察してくるのも、楽しみにしています。

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